解体費用の勘定科目と仕訳|法人・個人・建て替え別の処理
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建物を解体したとき、その費用をどの勘定科目で処理すればよいのか迷う方は多いのではないでしょうか。解体費用の扱いは「なぜ壊すのか」によって変わり、損金・必要経費として落とせることもあれば、土地の取得価額に含めて費用化できないケースもあります。同じ金額を払っても、目的の違いで税金の計算が大きく変わるのです。
この記事では、法人・個人事業主・個人のそれぞれについて、解体費用の勘定科目と仕訳の考え方、建て替え・売却・土地購入といった目的別の処理、消費税や補助金の扱いまで整理します。税務の取り扱いは改正で変わることがあり、個別の判断は状況によって異なるため、最終的な処理は顧問税理士や税務署に確認しながら進めてください。
解体費用の勘定科目は「目的」で決まる|早見表
まずは全体像から押さえましょう。解体費用の処理は、大きく「費用(損金・必要経費)として落とす」か「資産(土地や建物)の取得価額に含める」かに分かれます。どちらになるかは、解体の目的で判断します。
| 解体の目的・状況 | 法人の処理 | 個人事業主・不動産所得の処理 | 個人(事業をしていない)の処理 |
|---|---|---|---|
| 古くなった建物を壊すだけ(跡地利用は未定) | 固定資産除却損 | 資産損失として必要経費 | 経費にならない |
| 建物を壊して新しい建物を建てる | 取壊費用・帳簿価額とも損金(新建物の取得価額に含めない) | 事業用なら必要経費 | 自宅の建て替えは経費にならない |
| 土地を使う目的で建物付きの土地を買い、1年以内に壊す | 土地の取得価額に算入 | 土地の取得価額に算入 | 土地の取得価額に算入 |
| 土地を売るために壊す | 譲渡原価(売却益の計算に含める) | 譲渡費用 | 譲渡費用 |
| 借りていた店舗・事務所の内装を撤去して返す | 固定資産除却損(原状回復部分は修繕費の場合も) | 同左 | ― |
ポイントは「解体費用そのもの」だけでなく、「壊した建物の帳簿価額(まだ償却しきれていない残り)」もセットで考えることです。以下、立場ごとに詳しく見ていきましょう。
法人が建物を解体した場合の勘定科目と仕訳
単に取り壊す場合は「固定資産除却損」
老朽化した倉庫を壊す、使っていない社屋を撤去するなど、跡地に新しい建物を建てる予定がない解体は、建物の帳簿価額と解体費用をあわせて「固定資産除却損」で処理します。損益計算書では特別損失に区分するのが一般的ですが、金額が小さければ営業外費用の雑損失とすることもあります。
たとえば、帳簿価額100万円の建物を、解体費用300万円を払って取り壊した場合の仕訳は次のとおりです(単位:万円)。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 固定資産除却損 | 400 | 建物 | 100 |
| 預金 | 300 | ||
減価償却累計額を別建てで記帳している(間接法)場合は、累計額も取り崩して建物の取得価額を消します。廃材を売って収入があったときは、その金額を除却損から差し引くか、雑収入として計上します。
建て替えのために取り壊す場合も損金になる
「古い建物を壊して、同じ場所に新しい建物を建てる」ケースでは、解体費用を新しい建物の取得価額に含めるのか迷うところです。法人税の基本通達では、自己の建物を取り壊して新しい建物を建築する場合、取り壊した建物の帳簿価額と取壊費用は、その事業年度の損金に算入できるとされています。新しい建物の取得価額には含めません。
つまり、仕訳の形は「単に取り壊す場合」と同じで、固定資産除却損として処理します。建て替え目的でも損金になる点は、次に説明する「土地を買ってすぐ壊す場合」と混同しやすいので注意しましょう。
解体費用を資産計上するケースは限られる
自社が持っていた建物を壊して建て替える場合、解体費用は新建物の取得価額に含めず、その期の損金にできます。資産計上が必要なのは、土地を使う目的で建物付き土地を買い、おおむね1年以内に壊す場合です。
土地を使う目的で建物付きの土地を買った場合は「土地」に含める
はじめから建物を壊して土地を使うつもりで、建物付きの土地を購入し、取得後おおむね1年以内に取り壊しに着手した場合は、取り扱いが変わります。この場合、取り壊した建物の帳簿価額と取壊費用の合計(廃材の売却収入があれば差し引いた額)を、土地の取得価額に算入します。国税庁のタックスアンサー「土地とともに取得した建物を取り壊した場合の土地の取得価額」で示されている考え方です。
解体費用300万円を払い、購入した建物の帳簿価額が500万円だった場合の仕訳は次のようになります(単位:万円)。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 土地 | 800 | 建物 | 500 |
| 預金 | 300 | ||
土地は減価償却ができない資産です。土地の取得価額に含めた解体費用は、その土地を売却するまで費用になりません。解体を含めた土地の購入を検討するときは、この分の税負担を見込んでおきましょう。
土地を売るために取り壊す場合
保有していた土地建物を更地にして売却する場合、解体費用は土地の譲渡に要した費用として、売却益(譲渡損益)の計算に含めます。建物の帳簿価額は除却損または譲渡原価として処理します。売却の年度内に解体と引き渡しが完了するのが通常ですが、年度をまたぐときは計上時期に注意が必要です。
借りていた店舗・事務所の内装を撤去する場合
テナントを退去する際、借りていた店舗や事務所の内装を撤去して原状回復する費用は、「建物」や「建物附属設備」として資産計上していた内装の帳簿価額とあわせて、固定資産除却損で処理するのが基本です。貸主への原状回復費用のうち、壁や床の補修など資産の除却にあたらない部分は修繕費とすることもあります。
なお、撤去費用が少額で、新しい店舗の内装工事と一体で行われる場合は、新しい内装の取得価額に含めるべきかどうか判断が分かれることがあります。請求書で解体部分と新設部分を分けてもらうと、処理がしやすくなるでしょう。
個人事業主・不動産オーナーが解体した場合の勘定科目
事業用の建物を取り壊した場合は「資産損失」として必要経費
個人事業主が店舗や倉庫などの事業用建物を取り壊した場合、建物の未償却残高と取壊費用は、所得税法上の「資産損失」として、その年の事業所得の必要経費に算入できます。勘定科目は「固定資産除却損」や「雑損失」を使うのが一般的です。
賃貸アパートや貸店舗などの不動産所得についても同様に必要経費になりますが、不動産の貸付けが「事業的規模」(一般にアパートなら10室以上、戸建てなら5棟以上が目安とされる、いわゆる5棟10室基準)に満たない場合は、その年の不動産所得の金額が上限になります。つまり、損失が所得を上回る部分は切り捨てられ、翌年に繰り越すことはできません。
| 区分 | 資産損失の扱い |
|---|---|
| 事業所得(店舗・工場など) | 全額を必要経費にできる。赤字は他の所得と損益通算できる |
| 不動産所得・事業的規模あり | 全額を必要経費にできる。赤字は損益通算できる |
| 不動産所得・事業的規模なし | その年の不動産所得の金額が上限。超える部分は切り捨て |
自宅を取り壊して建て替えた場合
事業に使っていない自宅の建て替えは、家事上の支出にあたるため、解体費用を必要経費にすることはできません。新しい自宅の取得価額にも含めません。住宅ローン控除の対象になるのも、原則として新しい建物の取得や工事にかかった費用であり、旧建物の解体費用は含まれないと考えておくのが無難です。
自宅を取り壊して土地を売る場合
自宅を取り壊して更地にし、土地を売却する場合は、解体費用を譲渡費用として譲渡所得の計算に含めることができます。建物の取得費の残り(未償却残高に相当する額)も、取得費として差し引けます。売却契約書や解体業者の領収書は、確定申告まで必ず保管しておきましょう。
自宅を取り壊して賃貸アパートを建てる場合
自宅を壊して賃貸アパートを建てる場合、解体費用は「これから始める不動産賃貸業のための支出」です。業務を始める前の支出であるため、必要経費にできるか、アパートの取得価額に含めるべきかは判断が分かれます。金額が大きくなりやすいので、事前に税理士に確認しておきましょう。
賃貸アパートを取り壊して建て直した場合
賃貸中のアパートを取り壊して、同じ土地に新しい賃貸アパートを建てる場合は、不動産所得の必要経費として処理します。旧建物の未償却残高と取壊費用が対象です。建て替え期間中は家賃収入が止まるため、その年の不動産所得が赤字になることも多く、前述の「事業的規模」の有無が結果を左右します。
賃貸アパートを取り壊して土地を売る場合
賃貸アパートを取り壊して土地を売却するときは、解体費用は譲渡費用、旧建物の未償却残高は取得費として、譲渡所得の計算に含めます。不動産所得の必要経費にはなりません。
賃貸アパートを取り壊して自宅を建てる場合
賃貸アパートを壊して自宅を建てる場合、取り壊し時点で賃貸業を廃止したことになります。旧建物の未償却残高と取壊費用を不動産所得の必要経費にできるかは、廃業時の処理として扱いが分かれる部分のため、税理士に相談してください。
相続した家・空き家を解体した場合の税金の扱い
相続した実家を解体して土地を売る場合、解体費用は譲渡費用に含められます。さらに、相続した空き家を解体して売却する場合には、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。耐震基準や相続からの期間、売却金額などの要件があり、改正で内容が変わることもあるため、売却前に最新の要件を確認しましょう。
一方、相続した家を解体して自分で住む・駐車場にするなど、売却しない場合は、解体費用を経費にする場面がなく、税金の計算には影響しません。駐車場として貸す場合は、その後の不動産所得の計算に解体費用を含められるかどうかも判断が分かれます。
解体費用の消費税と補助金の扱い
解体工事は課税仕入れになる
解体工事は消費税の課税取引なので、法人や個人事業主が課税事業者であれば、解体費用にかかった消費税は仕入税額控除の対象になります。ただし、土地の譲渡は非課税取引のため、売却目的の解体費用にかかる消費税は、課税売上割合によっては全額控除できないことがあります。
インボイス制度のもとでは、仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)が必要です。解体業者が適格請求書発行事業者かどうかは、見積もりの段階で確認しておくと安心です。
補助金を受け取った場合は収入として計上する
自治体の空き家解体補助金などを受け取った場合、法人は益金、個人事業主は収入(雑収入など)として計上します。固定資産の取得に対する補助金で使える「圧縮記帳」は、解体費用のような費用の補助には使えないのが原則です。事業をしていない個人が自宅や空き家の解体で受け取った補助金は、一時所得として申告が必要になることがあります。
費用計上と資産計上、どちらが節税になる?
ここまで見てきたように、解体費用を費用として落とせるか、資産に含めるかは、目的によって決まっており、自由に選べるわけではありません。ただし、処理の違いが税金に与える影響を理解しておくと、解体や土地購入のタイミングを考えるうえで役に立ちます。
| 処理 | 税金への影響 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 費用(損金・必要経費)として計上 | その期の利益が減り、税金が下がる | 解体した期に利益が出ている |
| 土地の取得価額に算入 | 土地は減価償却できないため、売却するまで費用にならない | ―(目的で決まる。節税効果は小さい) |
| 新しい建物の取得価額に算入 | 耐用年数にわたって減価償却で費用化 | 解体した期は赤字で、将来の利益が見込まれる |
解体した期に費用を計上しても、その期が赤字になれば、赤字は繰越欠損金として翌期以降の利益と相殺できます。青色申告をしている場合、現行制度では法人は10年間、個人は3年間が繰り越しの期間です。繰り越せる期間と、将来どのくらい利益が出るかを見比べて、解体の時期を検討するとよいでしょう。
解体費用を経理処理するときの注意点
解体費用の内訳を書類で残す
解体工事の見積書や請求書には、建物本体の解体費用のほかに、アスベスト除去、残置物の処分、整地、付帯物の撤去などが含まれることがあります。費用の性質によって処理が変わる場合(整地費用を土地の取得価額に含めるかどうかなど)があるため、内訳が分かる書類を保管しておきましょう。
廃材の売却収入を忘れない
鉄骨造の建物などでは、スクラップの売却収入が発生することがあります。この収入は、除却損から差し引くか、雑収入として計上します。業者から「廃材の売却分を解体費用から値引きする」形で提示されることもあるので、見積書の記載を確認してください。
残置物の処分費用は分けて考える
建物の中に残った家具や設備の処分費用は、建物の解体費用とは別に、廃棄物処理費用や雑費として処理するのが一般的です。事業用の備品であれば、その備品の除却損としてあわせて処理します。
解体費用の勘定科目に関するよくある質問
Q. 解体費用は「修繕費」で処理できますか?
建物を取り壊す費用は、資産の維持管理のための支出ではないため、修繕費にはあたりません。固定資産除却損などで処理します。建物の一部を撤去して機能を維持するような小規模な工事であれば、修繕費になる場合があります。
Q. 解体費用を新しい建物の取得価額に含めてはいけないのですか?
自社の建物を取り壊して建て替える場合、法人税では取壊費用と旧建物の帳簿価額を損金とする取り扱いが示されています。取得価額に含めると費用化が遅れ、損金算入の時期を誤る可能性があるため、通達に沿った処理をおすすめします。
Q. 解体費用を払った年と、工事が完了した年が違う場合はどうなりますか?
除却損を計上するのは、原則として取り壊しが完了した日の属する事業年度です。前払いした分は前渡金などで処理し、完了時に振り替えます。
Q. 個人で自宅を解体した場合、確定申告は必要ですか?
自宅を解体しただけなら、解体費用は経費にならず、申告も不要です。解体後に土地を売却した場合や、補助金を受け取った場合は、譲渡所得や一時所得の申告が必要になることがあります。
まとめ
解体費用の勘定科目は、「なぜ壊すのか」で決まります。古い建物を壊すだけ、または建て替えるための解体であれば、法人は固定資産除却損として損金に、個人事業主は資産損失として必要経費にできるでしょう。土地を使う目的で建物付き土地を買って1年以内に壊す場合は土地の取得価額に、売却のための解体は譲渡費用に含めるのが基本です。事業に使っていない自宅の解体費用は、売却する場合を除いて経費にはなりません。
税務の取り扱いは改正されることがあり、事業的規模の判定や業務開始前の支出など、判断が分かれる論点も多くあります。金額が大きい解体工事では、処理の違いが税額に直結するため、工事の前に税理士へ相談しておきましょう。解体費用そのものを抑えるには、複数の解体業者から見積もりを取って比べることも欠かせません。
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