解体工事の際に発生しやすい事故とは?事故を防ぐための安全対策も紹介!

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解体工事の際に発生しやすい事故とは?事故を防ぐための安全対策も紹介!

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家屋や建物の解体工事を行う場合に、事故が起きる危険性があるのではないかと疑問に感じる方もいるでしょう。そこで今回は、解体工事の際に発生しやすい事故に焦点を当てて具体的に解説を行っていきます。解体工事は常に危険と隣合わせであり、いつ事故やトラブルが発生してもおかしくありません。事故やトラブルを防ぐためには安全対策の徹底も重要であり、作業員や近隣住民を守る手立てとなります。事故を防ぐための安全対策も含めてご紹介していきますので、どうぞ参考にしてください。

解体工事の際に発生しやすい事故

それでは早速、解体工事の際に発生しやすい事故について確認していきます。どれだけ安全に気をつけていても発生してしまうのが解体工事における事故であり、いつ事故が起こってもおかしくはないと考えておくことが重要です。

重機の取り扱いを間違えてしまったり、重い廃材を上から落としてしまったりするというケースもあります。安全第一で解体工事を行うことはとても重要ですが、それでも起きてしまうのが事故です。具体的に、どういった事故が起こりやすいのかについて理解を深めていきましょう。

足場の崩落

まず、解体工事の際に発生しやすい事故として、足場の崩落を挙げることができます。解体工事を行う際は、事前に建物の周囲に足場を設置して作業員の安全性を確保することがあります。足場をしっかりと固定していても、強風などが原因となって倒れてしまうことがあります。

大きな建物や構造物を解体する場合は、その分足場も高くなり、さらに設置する足場の面積も大きくなっていきます。足場が大きくなればなるほど、風の影響を受けやすくなることもあり、足場の崩落につながる危険性が高まっていきます。

実際に足場の崩落によって周囲の人や車、民家などを巻き込んでしまうことがあり、危険な事故につながることもあります。解体作業員としては万全の注意を払いながら工事を進めていくことが求められます。

足場からの転落

解体工事の際に発生しやすい事故としては、足場からの転落も挙げることができます。足場の崩落もそうですが、万全に設置されている足場から転落してしまう作業員がいることも事実です。特に高所からの転落の場合、人命に関わるリスクもありとても危険です。

単純な転落事故に関しては本人の注意不足ということで済まされることもありますが、万一、転落した先に人がいれば大事故につながりかねません。

また、過労によって転落してしまった場合は、解体工事にあたる組織全体として作業スケジュールに無理がなかったかなどを見つめ直す必要があります。他の作業員も同じように疲れやストレスが溜まっていて、同じように転落してしまう可能性があると判断することもできます。

その場合はいったん工事を中断して、作業員の体力回復に努めることも重要です。

近隣住宅の破壊

解体工事中は、近隣住宅を破壊してしまうという危険性もはらんでいます。解体工事では重機を使って家屋や建物を取り壊すことが多くなりますが、重機を利用している最中に誤って隣の家のブロック塀やフェンスを破壊してしまうということもあります。

ブロック塀やフェンスに関しては解体対象の構造物と密接していることも多く、少しの操作ミスで破壊につながるリスクが出てしまいます。

また、幅の広い重機や車両を運転している時に、周辺の家の塀などにこすってしまうということもあります。少しでも近隣住宅に傷をつけた場合は、住民からのクレームにつながることがあります。場合によっては損害賠償請求につながる可能性もあるので、解体業者としては十分に注意が必要です。

解体工事中に発生した事故に関しては、基本的に解体業者が責任を負うことになります。施主が何かしなければならないということは少ないので、そこまでの心配は必要ありません。

近隣住宅の設備を傷つけたり破壊したりした場合は、補修工事を行うことも一般的です。

外壁の倒壊

解体工事中に発生しやすい事故としては、外壁の倒壊も挙げることができます。解体中の建物の外壁が倒れると、人命に関わる重大な事故につながるリスクもはらんでいます。解体工事中の建物に関しては、外壁が不安定になっていることも少なくありません。そのため、ワイヤーなどを使って固定しながら作業をすることが一般的です。

しかし、解体業者の中にはワイヤーの設置を怠ってしまうケースもあります。また、ワイヤーで固定していても強度が十分ではなく、強風であおられてしまうこともあります。足場の設置と同様に、ワイヤーも強固に固定することが大切です。

外壁の倒壊も周囲に人や車、建物などがあると大きな事故につながるリスクがあることを承知した上で工事に向き合うことが求められます。

重機や車両との衝突

重機や車両との衝突も、解体工事の最中に発生しやすい事故として挙げることができます。解体業者側が操縦している重機や車両が一般車両に衝突してしまうこともありますが、その反対のケースも珍しくありません。

工事現場に駐車している重機や車両に一般車両が衝突してしまうというケースです。狭い路地などに重機や車両を駐車させていると、視界が悪くなることがあり、車や通行人、自転車などが交通事故に遭いやすくなってしまいます。

基本的に危険性が高いと判断された場所に関しては、ガードマンや誘導員を配置することが多いですが、コスト削減などの理由でガードマンなどを雇用できないこともあります。そうした場合は特に注意が必要であり、なるべく視界の悪い道路には重機などを駐車させないといった対応を取ることも大切です。

ガス爆発

解体工事中に発生する事故として、ガス爆発を挙げることもできます。解体工事を開始する前には、ライフラインの撤去が必要であり、水道以外のガスや電気、インターネットといった設備は撤去してから工事に当たることが大切です。

しかし、場合によってはライフラインの撤去をしないまま工事を開始してしまうケースがあります。例えば、ガス管の撤去を怠ったまま工事を開始して、誤って重機などで切断してしまった場合は、ガスが建物中に漏れ出ることになります。

その状況で何らかの引火源がガスと触れてしまうと、ガス爆発や火災へとつながるリスクが出てきます。ガス爆発や火災が発生すると、作業員はもちろんのこと、近隣住民や通行人にも被害が及ぶ可能性があります。逃げ遅れると、命を落とす危険性もある重大な事故につながりかねません。

一般的な家屋の解体の際も十分に注意が必要ですが、ガソリンスタンドの解体を行う際も細心の注意を払う必要があります。ガソリンスタンドの工事ではガス爆発がつきものであり、十分に注意しながら作業を進めることが重要です。

アスベストの飛散

さらに、解体工事の際に発生しやすい事故としてアスベストの飛散を挙げることができます。家屋や建物にアスベストが使用されている場合は、事前にアスベストを除去してから解体工事を開始する必要があります。

しかし、アスベストがあるとは気づかなかった場合や、アスベストの存在を知っていてもそのまま工事を開始してしまう業者があることも事実です。アスベストに対する適切な対応を行わずに解体工事を開始すると、アスベストの飛散につながり周辺の住民に大きな被害をもたらす危険性があります。アスベストは人体に悪影響を及ぼすことがわかっており、適切な業者に除去を依頼することが重要です。施主としては事前調査も含めて、アスベストへの対応をきちんと行ってくれる業者に工事を依頼するようにしましょう。

解体工事で発生した事故事例

ここまで解体工事の際に発生しやすい事故について取り上げてきましたが、ここからは実際に解体工事の際に発生した事故事例についてご紹介していきます。とにかく、家屋や建物の解体工事はとても危険な行為であることを認識しておくことが大切です。

実際に人命を落とす重大な事故が発生したケースもあり、その教訓を後世に受け継いでいく必要があります。解体業者としても十分に注意をしながら工事を行うことが求められますが、解体現場の近くを通行する人や近隣住民の方も危険があることを認識しておく必要があります。そのためにも、具体的にどういった事故が発生しているのかについて理解を深めていきましょう。

火災事故

まず解体工事で発生した事故として、火災事故を挙げることができます。これは2017年1月に千葉県市川市で発生した事故で、木造2階建ての住居が全焼するという事故になりました。出火したのは解体工事を行っていた銭湯で、出火原因は公表されていませんが強風が影響したのではないかと推測されています。

解体工事を行っていたのは銭湯ですが、その隣家が全焼するという不幸な事故になってしまいました。木造と鉄骨2階建てで約500㎡の銭湯も全焼しました。作業員4名で重機を使った解体工事を行っていましたが、幸い負傷者は出ませんでした。

また、隣家に住む男性も無事であったため、この火災事故を通して死傷者は出なかったことが不幸中の幸いです。

鉄パイプの落下

続いての事故事例として、鉄パイプの落下を挙げることができます。耳にするだけでも恐怖感の募る事故ですが、実際に2016年10月に東京都港区六本木で発生しています。

足場の解体作業中に10階部分から鉄パイプが落下して、偶然現場下を通りかかった男性の側頭部を直撃する形となりました。この男性は死亡して、帰らぬ人となってしまいました。高所から何か物が落ちて人に直撃すると、そのまま命を落とす結果になることを改めて知らせる重大な事故です。

感電による死亡事故

続いて、感電による死亡事故の事例をご紹介します。これは、店舗の解体作業中に、ブレーカーを落とさずに作業を行った影響で感電した作業員が死亡してしまったという事故ですが、活線を素手で持ったワイヤーカッターで切断していたところ、感電してしまいました。

感電の危険性について十分に理解しておかないと、このような危険な作業を行ってしまうことがあります。また、この解体業者では事前の作業計画がきちんと作成されておらず、社長が毎回指示を出す形で工事を行っていたことも明らかになっています。

適切な工事スケジュールを立てて、作業員自ら主体的に工事を行うことの重要性が教訓として残される事故となりました。

足場の倒壊

続いては、2012年12月に発生した足場の倒壊事故について取り上げます。これは兵庫県神戸市で発生した事故で、解体工事のために組んでいた足場が強風にあおられる形で倒壊してしまいました。高さが約10メートル、長さが約100メートルという広範囲にわたって道路に向かって倒壊したこともあり、重大な事故につながる危険性もはらんだ形になってしまいました。

それでも幸い、死傷者を出すことはありませんでした。道路を通りかかっていた乗用車1台が被害に遭いましたが、人命に関わることはなかったことが不幸中の幸いです。

足場からの転落事故

続いての事故事例として、足場からの転落事故について見ていきます。この事故では、足場の解体作業中に、作業員がバランスを崩して約10メートル下の地上に転落して重傷を負う結果となりました。

転落などの危険性がある足場では、基本的に親綱の設置と安全帯を使用することが義務ですが、この事故では安全帯の使用を怠っていたことが明らかになっています。親綱だけでは十分な安全性を確保することができません。解体業者としては、改めて工事中の危険性を認識して必要な準備を怠らないことが求められます。

アスベストの飛散

2011年5月にはアスベストの飛散という重大な事故が発生してしまいました。これは神奈川県の旧校舎を解体している際に発生した事故です。本来であれば事前に調査をして除去する必要があるアスベストですが、この解体工事では、アスベストがあることを知りながら適切な処分を怠ったことが明らかになっています。

コストダウンをすることが大きな目的であり、解体業者の利益を確保するためにアスベスト除去をしないまま工事を開始することになりました。その結果、解体工事を通してアスベストを飛散させることになり、敷地内にいた子供たちや近隣住民にまで影響を与えるという重大な事故につながりました。

ガス管の切断によるガス爆発

続いて、ガス管の切断によるガス爆発に関する事故について見ていきます。この事故は2011年2月に福井県で発生したものです。

雑居ビルの解体工事を行っていた最中に、作業員が誤ってガス管を切断してしまったことが原因とされています。その結果、ガス漏れが発生して、その後何らかの原因でガスに引火して爆発事故が起きることになりました。

解体工事中は常に危険と隣り合わせであることを認識した上で、ガス管の対処に当たることが重要です。

外壁崩落による死亡事故

最後にご紹介するのは、外壁崩落による死亡事故の発生です。これは2003年に静岡県の解体現場で起きた事故です。この事故では、鉄骨コンクリートの外壁部分の一部が数十メートルしたの県道に落下する形となりました。その結果、信号待ちをしていた乗用車2台が下敷きとなり、車内にいた2名が死亡、2名が負傷するという悲惨な事故になってしまいました。

また、転落した作業員2名も死亡するという悲惨な事故となり、後世に受け継がれるべき事故として、今でも多くの解体業者の教訓となっています。

この事故では、工事責任者が工期短縮のために解体手順を遵守しなかったことが原因とされています。通常1週間かけて行う作業を2日間で行おうとするなど、そのずさんな管理体制が後々明らかになりました。

まず優先するべきは安全であり、コストや工期ではありません。改めて安全第一の意識を持った上で解体工事に当たることが重要です。

解体工事での事故を防ぐための安全対策

解体工事では、さまざまな事故が発生していることを頭に入れておくことがポイントです。その上で、ここからは解体工事での事故を防ぐための安全対策について取り上げていきます。安全第一が重要だとわかっていても発生してしまうのが事故であり、解体工事の危険性でもあります。

だからと言って、安全対策を怠って良いということにはなりません。常に安全を優先する意識を持ちつつ、無理のない工程で作業を進めていくことが求められます。実際に、解体業者では安全性への意識を高める啓発活動を行っていることも少なくありません。具体的にどういった安全対策の方法があるのか、その理解を深めていきましょう。

危険予知活動の徹底

まず、解体業者が取り組む安全対策として、危険予知活動の徹底を挙げることができます。解体業者では、危険予知活動のことを略して「KY活動」と呼んでいます。KY活動を行うことによって危険を可視化することが可能となり、未然に重大な事故を防ぐことにつながる可能性を高めることができます。

危険予知に関しては、できるだけ具体的であることが求められます。例えば、「ビルの解体工事においては、ガス爆発を起こす危険性があります」といった危険予知では十分ではありません。そうではなく、「ビルの解体においては、ガス管にガスが溜まっていることが想定されます。そのため、電動ノコギリを使用する際は火花やガス臭に十分に注意する必要があります。」といった形で、より具体的に危険性があることを周知させることがポイントです。

危険性が高いことに加えて、具体的にどういった行動に注意するべきかまで落とし込むことができると、作業員の意識だけではなく行動にも変化を加えることができます。日頃から危険予知活動を行って、作業員自らが危険なポイントを判断できるようになると、より一層安全性を高めることにつながります。

作業手順の遵守

解体工事における安全対策という意味では、作業手順の遵守も挙げることができます。実際に発生した事故でも、作業手順を遵守していなかったり、不適切な行動を取ったりしたことが原因で事故につながっているケースは珍しくありません。

それだけ作業手順を遵守することは重要であり、作業員たちもその意識を高く持つことが求められます。作業手順の遵守に関しては、上記で取り上げた危険予知活動の内容を反映させることがポイントです。危険予知活動を通して出てきた危険性に対して、それを回避できるような内容で詰めていく必要があります。

例えば、電動ノコギリの取り扱いに注意が必要なのであれば、具体的にどの部分から切断していくのか、どの部分は切断してはいけないのかなど、より具体的に手順を定めて明確にすることが大切です。

作業員自体も作業手順の遵守を意識して守ることが大切ですが、組織全体としても意識を徹底させる風土を構築することが求められます。解体業者の経営者や現場責任者が主導して研修やミーティングを開催するなど、作業員たちに作業手順の遵守に関する習慣を身につけさせることがポイントです。

5Sの徹底

さらなる解体工事の際の安全対策として、5Sの徹底を挙げることもできます。5Sとは、以下の言葉の頭文字を取ってつけられた名称です。

  1. 整理
  2. 整頓
  3. 清掃
  4. 清潔
  5. 躾(しつけ)

アルファベットで記載した時に、全ての頭文字が「S」で始まることから「5S」と呼ばれるようになりました。解体工事現場はただでさえ乱雑になることが多く、何の意識もしていないと、すぐに汚くなって何がどこにあるのかわからなくなることがあります。

そういった状況で作業を続けていると、作業員の注意力も緩慢になっていき事故が発生する確率を高める結果につながるリスクが出てしまいます。何はともあれ、まず優先するべきは安全です。作業員の安全確保もそうですが、解体工事を何事もなく無事に終えることが最優先されるべきでしょう。

そのための1つの考え方として、5Sの徹底を図ることも重要なポイントです。

1人1人が気をつける

解体工事の際にはさまざまな安全対策を意識して、実際の行動につなげることが重要です。その中でも特に意識しておきたいのが、1人1人が気をつけるということです。最終的には1人1人が高い意識を持って、解体工事と向き合っていくしかありません。解体作業員はもちろんのこと、近隣住民の方や解体現場の近くを通行する方も含めて危険性があることを理解しておく必要があります。

解体工事を行う現場は過酷な環境との戦いでもあります。夏場や真冬は暑さや寒さで体調に悪影響を及ぼすことがあります。また、繁忙期には、長時間労働を強いられたり休日返上で工事に当たったりする作業員が出てくることもあります。さまざまな事情で疲労やストレスを抱えた作業員がいることも確かなことであり、注意力に欠けて重大な事故につながってしまうことがあります。

安易な気持ちで「何とかなるだろう」、「大丈夫だろう」といった考えを持っていると、事故や災害に巻き込まれる危険性も高くなってしまいます。そうではなく、常に「危険があるかもしれない」という意識を持つことで、少しでも事故や災害のリスクを減らすことができます。

解体作業員はもちろんのこと、施主や通行人、近隣住民の方も含めて、1人1人が高い意識を持っておくことが大切です。

国が定める安全対策

ここからは、国が定める安全対策について解説していきます。解体工事における事故はさまざまな状況で発生することがあり、一概に何が原因で発生するとは言い切れません。その中で、解体業者を適切に選ぶことが重視される部分もあります。

国が定める安全対策では、解体業者の労働環境や労働条件の改善を促す内容が多く盛り込まれています。労働安全衛生法や労働安全衛生規則、国土交通省のガイドラインなどを含めて、国が定める安全対策について確認していきましょう。

労働安全衛生法

まずは、労働安全衛生法について見ていきます。労働安全衛生法は、主に以下のことを目的として制定されました。

この記事のポイント
労働安全衛生法

労働災害防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主活動の促進の措置を講ずるなどその防止に関する総合的計画的な対策を推進することによって、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的として制定された法律。

労働安全衛生法では、解体業者に対して快適な職場環境の実現と労働条件の改善を促しており、作業員たちが気持ち良く働くことができるような体制を強化することを求めています。そうした体制が、解体現場における作業員たちの安全性と健康を担保することにつながると考えています。

安全や健康は労働者にとっても重要な課題であり、労働安全衛生法の規定を遵守することで、組織全体として適切な風土作りをすることができます。

労働安全衛生規則

続いての国が定める安全対策として、労働安全衛生規則を挙げることができます。労働安全衛生規則は、以下のことを目的として制定されました。

この記事のポイント
労働安全衛生規則

厚生労働省が「労働安全衛生法」に基づいて、労働環境の安全と衛生面の快適さなどを目的として制定した規則。

労働安全衛生規則では、主に安全管理や救護の指針、機械や危険物、有害物の取り扱いに関する規則が定められています。それぞれの規定や事項を確認した上で遵守することで、労働者の安全や衛生面の快適さを担保することができます。

国土交通省のガイドライン

国が定める安全対策としては、国土交通省のガイドラインも挙げることができます。国土交通省のガイドラインは、2003年3月に静岡県富士市で発生した建築物の解体工事における重大事故を受けて発表されました。

実際に、国土交通省のガイドラインには以下のような規定が盛り込まれています。

  • 事前の情報提供・収集と調査の実施による施工計画の作成
  • 建築物外周の張り出し部、カーテンウォールなどの外壁への配慮
  • 大規模な建築物への配慮
  • 増改築部などへの配慮
  • 想定外の状況への対応と技術者などの適正な配置
  • 建築物の設計図書などの保存 etc…

国土交通省のガイドラインでは、事故防止を図るための規則や指針等の遵守が重要であることを明確にしています。特に外壁崩落等による災害防止は徹底的に訴えており、静岡県の事故の教訓を後世に受け継ごうとする姿勢が垣間見えます。

上記でご紹介した規定も含めて、厳重な安全対策が重要であり、解体業者に求められる部分も多くなっています。労働安全衛生法や労働安全衛生規則、国土交通省のガイドラインを含めて安全対策を万全にすることで、事故防止につなげていくことが大切です。

事故が発生した場合の施主への対応や被害

ここからは、解体工事の際に事故が発生した場合の施主への対応や被害についてご紹介していきます。解体工事で事故の発生を完全に防ぎ切ることは難しく、何らかの事情や原因で事故が発生してしまうこともあります。その際に施主にどういった対応を求められて、具体的にどういった被害が生じるのか理解しておくことがポイントです。

基本的に慰謝料請求はない

まず、解体工事で事故が発生した場合の施主への対応についてですが、基本的に慰謝料請求をされることはないと考えておいて問題ありません。解体工事中に発生した事故は原則として解体業者に責任があり、施主の責任が問われることは多くありません。

近隣に被害を与えた場合は、業者や近隣住民から慰謝料請求されるのではないかと不安に思う施主もいます。しかし、その心配は無用であり、基本的には解体業者が損害賠償を支払ったり補修工事を行ったりすることになります。

通常、解体業者は工事保険と呼ばれる保険に加入しています。万一のことがあった場合の保険であり、事故を起こしてしまった際の補償を行うために加入します。慰謝料請求などがあった場合は、この保険から負担される可能性が高いと考えておいて良いでしょう。

施主としては事故に遭われた方を心配する気持ちは出てくるでしょうが、金銭的な負担はないと考えておいて大丈夫です。

工事が遅延するリスク

解体工事中に事故が発生した場合の被害として、施主が被るのは工事が遅延することです。事故やトラブルが発生すると、その収拾にあたることが最優先となり、予定されていた工事は後回しにされてしまいます。

そうなると、予定されていたスケジュールがどんどん後ろ倒しされていくことになり、必然的に工事の完了も遅くなることが想定されます。解体工事を終えた後に新築物件の建設などを予定している場合は、次のスケジュールに影響が出てくる可能性もあります。また、更地にした土地を売却する予定がある場合も、購入者に連絡を入れておくことがおすすめです。

工事が遅延すると、通常は施主がその分の人件費などを負担することになりますが、事故やトラブルの場合は必ずしもそうではありません。業者によっては仕方のない遅延と割り切って、追加費用の負担を求めないケースもあります。この辺は業者との話し合いが必要ですが、場合によっては追加費用負担が発生することもあるので注意が必要です。

作業員の欠員による遅延

工事が遅延するリスクについて、もう少し詳しく解説していきます。実際に事故やトラブルの発生によって工事が遅延する原因としては、作業員の欠員を挙げることができます。解体工事中の事故によって作業員が被害に遭ってしまうこともあります。

規模の大きな解体業者であればすぐに代わりの作業員を補填することもできますが、そうでない業者の場合はなかなか代わりの作業員が見つからないことがあります。例えば、それまで6人で行っていた工事を、事故の発生によって5人や4人で行うことになると、足りなくなった人数分だけ工事が遅れることになります。

作業できる人たちだけでそれまで以上のパワーを発揮して工事を行ったとしても、失った1人分や2人分を完全に埋め合わせることは難しいのが現実です。事故が発生してからは、それまでよりも少ない作業員で工事を進める必要があるため、単純に作業効率が落ちて工期の遅延につながっていくことがあります。

事故処理による遅延

事故によって工事が遅延する原因としては、事故処理による遅延も挙げることができます。事故の内容にもよりますが、例えば、作業員が足場から転落したという類の事故であれば、それほど事故処理に時間がかかることはありません。

もちろん、転落した作業員の応急処置や病院への搬送といったことは必要となりますが、基本的に半日程度あれば十分に対応することができます。

一方で、例えば、足場や養生そのものが倒壊してしまった場合などは、その処理に大幅な時間がかかります。足場や養生が倒壊すると解体工事開始前の状況に戻ってしまい、また一から設置し直す必要があります。そうなると、足場や養生を設置してから工事の再開となるので、どんどん作業スケジュールが後ろ倒しになっていきます。

さらに足場や養生が倒壊して通行人などに怪我をさせてしまった場合は、その対処に追われることもあり、工事の再開が遅れることがあります。事故の内容によって遅延の幅が変わってくることを理解しておきましょう。

解体工事で事故が発生した場合の対処法

ここからは、解体工事で事故が発生した場合の対処法について解説していきます。解体工事中に事故やトラブルが発生すると、施主としても余計な焦りを感じて、なかなか普段通りの行動ができないことがあります。精神的にも焦りやストレスを抱えることになり、思うようにメンタル面をコントロールできないこともあるでしょう。

その中で、事故が発生した場合にどういった対処法があるのか認識しておくことが大切です。いざという時に冷静な行動を取ることができるように、事故が起こる前から対処法について確認しておきましょう。

解体業者を頼る

まず、解体工事中に事故が発生した場合の対処法として、解体業者を頼ることが挙げられます。これは最もシンプルな対処法ですが、最も効果的な対処法としておすすめです。事故の状況によっては何とかならないケースもありますが、まずは業者に事故の状況や今後の対応について確認することが大切です。

第三者に被害を与えてしまった場合も、基本的には解体業者の責任で対応してもらうことがポイントです。作業員に怪我やトラブルが生じてしまった場合は、その作業員を心配する気持ちを持つことも大切です。

その一方で、業者の責任で発生した事故であれば、工事が予定通り行われるように働きかけを行うことも重要です。基本的に施主の責任で事故が発生するということは考えにくいので、事故やトラブルは業者の責任だと考えるのが自然です。

そのため、事故の責任を取ってもらうのも解体業者であり、施主としては解体業者を頼って何とかしてもらうように働きかけることが有効です。最悪の場合は解体業者の変更という選択肢もありますが、まずは工事を依頼している業者に何とかしてもらうようにしましょう。

近隣住民の理解を求める

続いての対処法として、近隣住民の理解を求めるという選択肢を挙げることができます。解体工事を開始する前に近隣住民の方には挨拶をして、工事への理解と協力を求めることが大切です。

それでも実際に事故やトラブルが発生すると、近隣住民の方々は不安な気持ちやストレスを抱えることになり、業者や施主に対してクレームを言ってくることがあります。それは自然なことであり、近隣住民側の立場に立てば当然の行動だと考えることもできます。

ここで施主や解体業者側としては、感情的になってはいけません。解体工事中に起きた事故であれば、どんな理由でも解体業者側に責任があると判断されることが一般的です。

そういった状況であるからこそ、臨時で近隣の方々に集まってもらい、状況の報告と今後の方針について改めて説明することが大切です。一度に召集することが難しい場合は、数回に分けて臨時の説明

会を開催したり、個々の住宅に伺ったりすることも有効です。

その際はできるだけ施主も同席することで、謝罪の気持ちを伝えることが重要です。解体工事は近隣の方々の協力がなければ成立しません。改めて近隣住民の方々の理解と協力を得るべく、建設的な話し合いの場を持つことがポイントです。

解体工事で事故を起こさないための業者選び

ここからは、解体工事で事故を起こさないための業者選びについてご紹介していきます。解体工事での事故はつきものだと考えることもできますが、できれば無事故で工事を終えてもらいたいというのが施主の共通認識でしょう。

そのためには、業者選びの段階から気をつけておきたいポイントがあります。複数の業者に見積もりを依頼してコミュニケーションを取った上で、最適な業者を選択することができればベストです。そのための考え方について確認していきましょう。

現地調査の有無

まず、事故を起こさないための業者選びとして意識しておきたいのが現地調査の有無です。基本的に多くの解体業者では見積もり依頼があると、解体現場に足を運んで現地調査を行うことになります。具体的に、現地調査を通して以下のようなことを確認しています。

  • 解体する家屋や建物の全体的な広さの確認
  • 隣家との境界線の確認
  • 隣家までの距離を確認
  • 重機を安全に使用することができるかどうかの確認 etc…

現地調査を行うことで、上記のようなことを確認しています。また、建築物の図面を見て地中に何か埋まっているものがないかについても、事前に確認を行います。こうした事前調査や確認を通して見積もりや施工計画の提示を行うのが通常の業者です。

こうした業者であればそれほど問題ありませんが、中には事前の現地調査を全く行わずに見積もり提示を行ってくる業者もあります。図面だけで判断できるという業者もありますが、やはり実際に現地を確認してみないと具体的な施工計画を立てることは難しくなります。

現地調査を行わない業者に限って、事故やトラブルを起こす可能性も高くなることがあります。面倒なことは避けて、利益を上げることばかりに執着していると安全面での対応がずさんになるからです。工事の依頼をした時点で、現地調査をしてくれない業者には発注をしないことがおすすめです。しっかりと現場まで来て、施工計画などを丁寧に説明してくれる業者の方が安心して工事を任せることができます。

足場や養生の設置

続いて、解体業者を選択する際に見るべきポイントとして、足場や養生の設置の部分を挙げることができます。まず、契約を結ぶ前に全体的な工事の流れについてしっかりと聞くようにしましょう。

その際に、足場や養生を設置して工事を行うという業者であれば問題ありません。解体工事では高所での作業を行うことが多いため、基本的に足場を設置してから工事を開始します。同様に、防音や粉じんの飛散防止といった観点で養生シートを設置することも基本です。

足場や養生を設置せずに工事を開始する場合は、安心して依頼することができないでしょう。その場合は、なぜ設置しないのか理由を聞くことが大切です。その理由が納得いくものであれば依頼しても構いませんが、そうでなければ無理にその業者に工事を任せる必要はありません。

足場を正しく設置して、手入れされている養生シートで建物を囲うことによって、安全で周囲にもなるべく迷惑をかけない形で工事を進めていくことができます。足場や養生の設置は解体工事においてベースとなる部分なので、その基本を大切にしているかどうかを慎重に見極めることがポイントです。

賠償保険への加入有無を確認

最後に、賠償保険への加入有無を確認することがポイントです。万一、解体工事中に事故やトラブルを起こしてしまった場合、被害者から慰謝料請求をされる可能性もあります。慰謝料は高額になることもあり、業者が抱えている資金だけでは足りないこともあります。その際に頼りになるのが賠償保険であり、保険に加入しておくことで万一のトラブルに対応することができます。

賠償保険に加入しているだけではなく、その保険が第三者への賠償責任が生じた際に適切な補償を

受けることができるのかという点も確認する必要があります。第三者への補償がなければ、保険に加入していてもほとんど意味がありません。

中には、業者側の費用負担を軽減するために保険に加入せずに工事を行うケースや、加入していても保険料が安く十分な補償を受けられないケースもあります。賠償保険に関しては、解体業者のみならず施主自身の身を守るという役割もあります。万一の際に施主が困ることのないように、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

まとめ

解体工事と事故の関係に注目して、解体工事の際に発生しやすい事故や実際の事故事例を中心にご紹介してきました。解体工事中は、いつどのような事故が起きるかわかりません。それは解体業者や施主も心得ておく必要がありますが、同様に近隣住民や一般の方々も認識しておく必要があります。

特に解体現場の近くを通行する際は注意深く通ることが大切です。ガードマンや誘導員がいる場合は、そういった方々の指示に従って通行することがポイントです。実際に人の命に関わるような重大な事故も発生しており、他人事とは言い切れません。自分の命は自分でしっかりと守ることを意識した上で、解体工事と向き合っていくようにしましょう。